FPU-β格子 局在振動(ディスクリートブリーザー)シミュレータ

非線形バネでつながれた粒子の鎖(FPU-β格子)で、エネルギーが少数の粒子だけに閉じ込められたまま 振動し続ける「局在振動(ディスクリートブリーザー)」を励起します。線形な格子では起こらない、 非線形性ならではの現象です。

Odd型(サイト中心) 1つの粒子を中心に左右対称。隣どうしが逆位相で振動する。 a₀=0.376, a±1=−0.197, a±2=0.009
Even型(ボンド中心) 隣り合う2粒子の間(バネ)を中心に反対称。 a₀=0.323, a−1=−0.323, a1=−0.054, a−2=0.054

▶ やってみよう

パラメータ

48
1.00
1.80
小さくしすぎるとブリーザーが崩れて広がる(下の「やってみよう」参照)
経過時間 t0.00
全エネルギー E0.0000
エネルギー変化率0.000%
局在度(中心±6サイトの保有エネルギー比)100.0%

サイト × 時間(エネルギー密度)

下が最新。明るいほどエネルギー密度が高い。1本の縦すじ=局在したまま残るブリーザー
site 0site N−1

FPU-β格子と局在振動(ディスクリートブリーザー)について

質量1・線形バネ定数1の粒子を周期境界条件でN個つなぎ、バネにさらに4次の非線形項(係数β)を加えたのが FPU-β格子です。粒子iの変位を qi とすると、運動方程式は次の通りです。

i = (qi+1−qi) + β(qi+1−qi)³ − (qi−qi−1) − β(qi−qi−1

通常、格子の振動(フォノン)はすぐに格子全体に広がってしまいます。ところが非線形項があると、 少数の粒子だけにエネルギーが閉じ込められたまま長時間振動し続ける 「ディスクリートブリーザー(局在振動)」という特別な解が存在できます。 ブリーザーには、1つの粒子を中心に対称なodd型と、隣り合う2粒子の間(バネ)を 中心に反対称なeven型の2種類があり、どちらも隣接粒子どうしが逆位相で振動します。

初期変位に使っている近似プロファイル(k=4, 出典下記 Table 1)
i−2i−1ii+1
Odd(i中心)0.00867−0.19680.3762−0.1968 (i+2: 0.00867)
Even(i-1/i境界中心)0.05355−0.323010.32301−0.05355

このシミュレータでは、この空間分布を「励起振幅 A」で拡大した qi(0) = A·ai を初期変位、 速度はすべて0(vi(0)=0)として初期条件を与え、実際のFPU-β方程式(上式)でそのまま時間発展させています。 これはブリーザーの正確な解ではなく、あくまで「近似的な種」です。振幅が十分大きければ非線形効果が 勝ってブリーザーとしてまとまり続け、小さすぎると通常の波(フォノン)として格子全体に散っていきます (「やってみよう」参照)。

数値計算の方法・エネルギーの検算について

時間発展にはシンプレクティック(速度ベルレ)法を使っています。RK4のような一般の数値積分法と違い、 ハミルトン系のエネルギーを長時間にわたって系統的な誤差なく保存できるため、ブリーザーが数値誤差で 人工的に崩れたり成長したりするのを防げます。画面の「エネルギー変化率」は摩擦のないこの系全体の 力学的エネルギーがどれだけ保存されているかを示す検算用の数値で、0%に近いほど数値計算が正しく 動いている目安になります。「局在度」は、初期励起の中心サイトを基準に、その前後6サイト (計13サイト)が保有するエネルギーが全エネルギーに占める割合です。

出典: K. Yoshimura and Y. Doi, "Existence and stability of discrete breathers in Fermi–Pasta–Ulam lattices," Journal of Differential Equations 298 (2021) 560–608, Table 1 (k=4: pure-quartic homogeneous potential X⁴/4 の場合の近似プロファイル)。